
先生、「静的サイト」って何ですか?
静かなサイト?

いい線です。サーバーの上で何もプログラムが動かない、
できあがった HTML と CSS と JavaScript を置いておくだけのサイトです。

WordPress はページを開くたびにプログラムがページを組み立てますが、
静的サイトは組み立て済みのページをそのまま返すだけ。

それだと何がいいんです?

まず安全です。サーバー側で実行されるプログラムがないので、
乗っ取りの入り口になる脆弱性がほとんどありません。

管理画面もデータベースもないから、
不正ログインされる場所すら存在しないんです。

更新地獄からも解放される…!?

WordPress 本体やプラグインの更新は不要になります。
それから、速い。組み立て済みだから表示は一瞬です。

極めつけはこれ。Cloudflare Pages などの配信サービスなら、
ホスティング費用は無料です。

無料!? 今、サーバー代に月1000円払ってるのに!?

静的ファイルの配信は世界的に安くなっていて、
個人や店舗のサイト規模なら無料枠で足ります。

でも、お知らせとかメニューの変更はどうするんですか?
HTML を手で書くのは無理ですよ。

今は Markdown などの原稿から HTML を自動生成するツールがあります。
原稿を直して、生成して、アップロードするだけです。

お問い合わせフォームが必要なら、
フォームだけ外部サービスを使う手もあります。

そういえばうちのフォーム、
ロボットみたいな英語の投稿がいっぱい来てました。

ボットのスパムですね。フォームやコメント欄は自動投稿の標的になるので、
reCAPTCHA のような「人間かどうかの判定」を付けるのが定番です。

あの「信号機の画像を全部選べ」ってやつですか。
僕、何回やっても間違うんですよね…。

そう、あれはお客さんにも負担なんです。
しかも導入や更新の手間が増えて、すり抜けるスパムもゼロにはなりません。

そして一番影響が大きいのはここ。reCAPTCHA は
フォームのページだけでなく、サイト全体に組み込まれることが多いんです。

役所とか支援機関のサイトの隅にいつもある、あの青いマークですか?

あれです。全ページで Google のプログラムを読み込むから、
サイト全体の表示が重くなって、訪問者のアクセス情報も毎回 Google に送られます。

お問い合わせフォーム1個のために、
サイト全部とお客さん全員が影響を受けるんですか!?

しかも、です。その reCAPTCHA も、
無料で使えた旧版は2025年末でサポート終了になりました。

ええっ!? あんなにみんな使ってるのに!?

今は Google Cloud への移行が必須で、無料枠は月1万回まで。
超えたら有料です。アカウントや請求の管理も増えました。

回数で課金…? ちょっと待ってください。
じゃあ、ボットが大量に押し寄せたら…。

そう、検証1回ごとの従量課金だから、攻撃されるほど
防御側の請求額が増えるんです。あなたの支払い額を決めるのは、攻撃側。

AI ボットの通行量はこれからますます増えます。
小さなサイトほど、この矛盾の直撃を受けることになる。

外部サービスに頼るということは、相手の都合による
仕様変更・有料化・終了とずっと付き合い続けるということなんです。

でも、お金を払ってでも付けておけば安心なんですよね?

それが…最近の AI はあの画像パズルを人間より上手に解くんです。
研究では突破率100%という報告まで出ています。

「クイズで人間かどうかを確かめる」という発想自体が
AI の時代には通用しなくなってきている。Google 自身も
パズルをやめて、行動から機械を推定する方式に移っています。

お客さんには面倒をかけて、ボットには突破されて、
お金もかかる。それって一体何のためなんですか!?

あ、でも先生、さっき言ってた「フォームだけ外部サービス」なら
大丈夫なんじゃないですか? 自分で reCAPTCHA を入れなくて済むし。

実は…その外部フォームサービスのスパム対策も、
中身は「reCAPTCHA 標準搭載」なんです。土台は同じ。

ええっ!? どこへ逃げても reCAPTCHA!?

そういうことです。フォームという仕組みである限り、この問題からは
逃げられません。「Web のフォーム」自体が、AI の時代にはもう成立しないんです。

そして思い出してください。小さなお店のサイトが WordPress のような
「動く仕組み」を必要とした理由は、実はほとんどフォームだけでした。

フォームが成立しないなら、動く仕組みを持つ理由も消える。
連絡は電話や SNS、LINE で置き換えられます。
「守るものを持たない」のが一番強いんですよ。

うちのサイトって、メニューと営業時間と地図と写真だけです。
…あれ? 動くプログラム、何も要らなくない?

そう、それが答えです。
世の中の小さなサイトの多くは、実は静的サイトで十分なんですよ。

僕、静的サイトに引っ越します!

次回は最終回。私の知っているあるサイトが、
WordPress から静的サイトにたどり着くまでの20年の話をしましょう。